対応が遅いことの利点 日本は強い説
わたしは外資系IT企業で働くようになって、23年目に入りました。初めて外資系企業に入ったのが2000年ですので、計算は簡単です。
外資系企業に限らず、日本企業でも意思決定が早く、行動が早い企業は多くあるでしょうが、ここ数ヶ月のIT企業における人員削減の動きを見ていると、やはり動きが早いなと思います。
これだけ「削減」のニュースが目立つと、「やっぱり外資系は怖い」と思う人も多いでしょうが、「それ以上に採用している」という事実があっての削減です。
逆に言うと、速やかに削減できるからこそ、速やかに増やせるわけです。
それは外資系企業の強さだとわたしは感じています。
カーレーサーは、ブレーキ性能の良い車ほど、スピードを出せると聞いたことがあります。いつでもスローダウン出来るからこそ、飛ばせると。
外資系企業の経営もそのように感じます。計器を常に注視し、異常があればすぐに対策するのです。採用で言えば、伸ばすべき時に積極採用し、慎重になるべき時は削減も厭わないのです。その結果、機会を逃さず、一気にビジネスを伸ばすことが出来るのです。
昔、ファイナンスの人に「ガードレール to ガードレールになるな」と言われたことがあります。売っていた製品のマージンと売上のバランスについてのコメントでした。
あるレベルの値引きをすると一気に売れる。しかし一気に利益率が落ちる。ちょうど良いところでコントロールしたいのですが、中途半端な値引きではキャンペーンは反応しません。通常より深い値引きのキャンペーンがあって初めて、売上がスパイクしたのです。
しかし、それでは売上が増えて利益が減るか、利益は増えるけど売上は伸びないといった極端な状態を繰り返してしまうのです。それを「ガードレール to ガードレール」と言われたわけです。
外資系企業の採用も、この「ガードレール to ガードレール」なのかもしれません。一気に採用して、一気に削減するからです。
車のレースで言えば、ガードレールにガンガンぶつかりながらも、最終的には真ん中に戻ってきて、早くゴールするのかもしれませんが、車のボディもガードレールもボロボロです。
企業はそれで良いのだろうかと思います。
タイトルの「対応が遅いことの利点」というのは、この「ガードレール to ガードレールが無いこと」ではないかと思うのです。
反応が遅いことで、多少は成長機会を逃すかもしれません。対応が遅いことで、スピードは遅いかもしれません。「この国は何にも変わらないな。動きが遅いな」
しかし長い目で見れば、状況はいつか振り子のように戻ってきます。慌てて反応しないことは、もしかしたら、日本という国の生存戦略なのだろうと思います。
悪く言えば「遅い」「危機感がない」「決断できない」ですが、よく言えば「慌てない」「慎重」「流されない」ということなのでしょう。